夜中から降り続いた雨が、世界に透明な膜を張っていて、光も音も遠くなる朝だった。
ぷかぷかと心はどこかに浮かんだまま、顔を洗う気にもなれない。
湿気が濃くて、吸い込んだ空気でのどがぺとぺとする気がする。
まだまだ夏が尾を引いている。
妊娠してからぐっと体温が高くなり、もともと代謝がかなり悪いほうだったのに、毎日汗だくでこの夏を過ごした。
キンキンに冷えたビールもアイスコーヒーも我慢しながら、初めて夏を憎らしく思った。
わたしはこんなにも夏を思っているのに、夏はわたしのことが嫌いなんだね、と。
そういうところが嫌なんだよと、イマジナリー夏との痴話喧嘩は、まだまだ長引きそうだ。
ぺとぺとをどうにかしたくて、昨日と今日の境目を曖昧にしたまま、「スウィートスリープ」という名前がつけられた紅茶を選ぶ。
ラベンダーの香りが遠くでする。
茶色い紅茶なのに、濃い青色の香り。
名前から察するに、眠る前に飲む紅茶なんじゃないだろうか。
このままもう一度目をつむったら、あまいねむりはわたしの所にもやってきてくれるだろうか。
あまい誘惑に惹かれながらも、さすがに、そろそろ顔を洗わなくちゃね。
また書きます。
明日もどうぞ健やかに。